本作は、映像作家小鷹拓郎の新作短編映画であり、「Unmanned 無人駅の芸術祭／大井川」（2021）で発表された作品である。映画の舞台は、芸術祭の開催地と同じ静岡県島田市。本作の内容を端的に説明すると、インドネシアから来た技能実習生が、その地で新型コロナウィルスに効果があると言われている「河童」の狩猟方法を、地元の猟師たちから学ぶ様子の一連の記録・・・という、無論、嘘であるこの「新型コロナに効く河童の狩猟」という「設定」を、小鷹自身と登場人物たちがアドリブで貫き通すモキュメンタリー作品である。

紹介文であるにも関わらず、ここではいわばネタバラシ的に作品の概要を説明したが、本作を楽しむには、「設定」の中に映し出される現実を見つけ、そこから希望を見いだすための思考を働かせてほしいと思うからである。ただでさえこの腐った国で、たくさんの困難を抱えているであろう、あの笑顔の爽やかなインドネシア人の青年は、どのような想いと意図でこの「嘘」に望んだのだろうか。ひょっとするとホントにあるかも知れない前代未聞の病に効く特効薬を、期待してはいけないのだろうか。なにより本作から抱く様々な疑問は、紛れもない現実そのものである。今日、この作品を目にする機会を得たあなたの現実。それは、ニュースを見れば思考停止の恐怖すら覚えてしまうほど、絶望的な世界かもしれない。ならば、まずはこの30分を目にしてほしい。終わりの見えないパンデミックの世界に希望を見出すヒントは、この「必要な嘘」に映し出される現実のなかに、あるのかもしれない。
居原田遥（インディペンデントキュレーター）

This work is a mockumentary that combines documentary and fiction.
During the 2021 covid pandemic, the Japanese economy was in decline. Foreign workers in Japan are often classified as “technical interns” (Ginou Jisyusei). They are not eligible for residency and often remain in Japan for many years as “temporary workers.” Because of this precarious visa system, many foreign workers, including Indonesians,, have fallen onto hard times.”Indonesian learn Kappa hunting techniques” directed by Takuro Kotaka, produced in the city of Shimada, during the corona pandemic.

He collaborated with Indonesians who were experiencing difficulty caused by the pandemic. In this film, a technical intern trainee from Indonesia learns to hunt with Japanese local hunters. ‘Kappa,’ used as a traditional medicine, is believed to be effective against corona. ‘Kappa’ is a fictional monster in Japanese traditional tales. Kotaka creates a fictional tale of hunting Kappa, meat can cure the coronavirus. All characters in the film are played by local people, not professional actors.

監督：小鷹拓郎
撮影・編集：小鷹拓郎
照明：児玉徳治　写真：大石蒼太　録音：ルリー　チチ
ナレーション：片岡フィトリ
音楽：笹間神楽保存会
出演：ルリー　チチ　片岡フィトリ　森川さん　ヤマさん　ナカさん　コダさん　ジュンさん　ヨネさん　中村さん　成瀬さん　児玉さん　笹間神楽保存会、ほか
主催：無人駅の芸術祭UNMANNED　NPO法人クロスメディア
協力：大井川鐵道　島田市猟友会　笹間神楽　静岡県　島田市市民
助成：ポーラ美術振興財団、UNIJAPAN
2021年製作

●受賞歴
2022　第14回 福岡インディペンデント映画祭 FIDFF 優秀作品賞受賞
2021　第16回 ジョグジャNETPACアジアン映画祭 JAFF ASIAN PERSPECTIVES SHORT部門 選出（インドネシア）

●上映歴
2022「第14回 福岡インディペンデント映画祭 FIDFF」福岡市科学館サイエンスホール、福岡
2022「第8回 バリ国際短編映画祭 Minikino Film Week」インドネシア・バリ
2021「第16回 ジョグジャNETPACアジアン映画祭 JAFF」Empire XXI、インドネシア・ジョグジャ
2022「Kenduri Seni Nusantara」Patani Art Space、タイ・パタニー
2022「UNMANNED 無人駅の芸術祭／大井川 2022」大井川鐵道、静岡
2021「NANDUR SRAWUNG」タマンブダヤギャラリー、インドネシア・ジョグジャ
2021「UNMANNED 無人駅の芸術祭／大井川 2021」大井川鐵道、静岡